僕たちはどう暮らし、どう働くか[island company. OPEN DAYレポ]
2026/6/28
メンバーの大半が自分たちの地元兵庫県香美町で暮らし、働いているHiCO-BAY。
僕たちは、たまに他の地域に旅に出ることがあります。
法人設立から5年。今までの間に、福井県鯖江市、山形、東京など、メンバーで一緒に旅をしてきました。旅先で同じものを見ながら、違うことを感じて、それを共有しながら自分たちの地元を考える。地域に根を張って活動する時間が長いからこそ、そんな時間が必要だと考えるからです。
そして、今回僕たちはまた2泊3日の新しい旅に出ました。
東シナ海に浮かぶ小さな離島、鹿児島県の甑島がその目的地です。

甑島に向かった理由
甑島に今の僕たちが会いたい人たち、今見ておくべきだと感じてやまない活動がありました。それが、株式会社island company(旧社名:東シナ海の小さな島ブランド株式会社)による甑島を中心とした事業と組織づくり。
island companyのミッションステートメントには次のような言葉が綴られています。
“百年先の風景をつくる”
私たちにとっての island は、地理としての島だけではありません。
そこに暮らす人と訪れる人、思いを寄せる人たちが集い、互いに支え合いながらつくっていく、そんな小さなコミュニティのこと。
言い換えれば、islandとは集落であり、一人ひとりの居場所です。
ひとつのパンを分け合う仲間のことを意味する company 。
私たちは、その仲間たちとともに、島々に受け継がれてきたその土地のらしさと、暮らしの風景に光を当て、食べること、旅すること、働くことを通じて、百年先の風景をつくっていきます。
この文言の中の1つ1つの要素が、僕たちが甑島に出かけた理由です。
地元を起点に法人を立ち上げて試行錯誤しながら活動した5年の時間を経て、改めて「自分たちは、誰と、何を理由に、何を目指して、何をするのか」を問い始めている今。
その問の先を走っているように見えたisland company。
このレポートは、そんなisland companyに出会うため、いとこ3人が香美町から車に乗り込んで出かけたロードムービーのようなものです。気長に読んで楽しんでもらえると幸いです。

愚直さ、組織の多様性
今回、island companyと出会うために活用したのは、OPEN DAYと呼ばれるisland companyが主催するツアー。事業の話、組織の話、地域の日常など、ありとあらゆる要素をオープンにしてくれる2泊3日の行程でした。
3日間にわたって代表の山下賢太さんをはじめ、ほとんど全てのスタッフの皆さんが帯同して、行く先々でプレゼンテーションをしてくださる贅沢な時間。
その時間の中で感じたことの一つが愚直な積み上げです。
甑島に出かける前から僕たちはisland companyについて一定の情報を持っていて、その多岐にわたる事業と地域へのインパクトを想像するにつけ、「きっと何か特別なカラクリやバックアップがあって成立しているんだろう」と邪推していた部分がありました。
でも、プレゼンテーションを聴いていく中で、その仮説は見事に裏切られます。
そこにあったのは、地域に向かう熱量と愚直な積み上げ。
耳から入ってくる説明の中にも、目から飛び込んでくる事業の現場の中にも、飛び道具的な何かは全く見当たらない。
それは、僕たちにとって刺激的な時間でありつつ、逃げ場や言い訳が入る隙間がなくなる感覚が身体に染み込んでくる時間。自分たちの地域との向き合い方について問われた時間でもありました。
カラクリや飛び道具がないと知ることは、熱量や思考回数・試行回数で突き抜けるという、最もシンプルで、かつ、難しいことに向き合うしかないと知ることでした。

そして、その最もシンプルで難しいことをやっているisland companyという組織のあり方も、示唆に溢れていました。
代表の山下賢太さんの2時間近いプレゼンテーションに続いて、行く先々で聴いたスタッフ1人ひとりのプレゼンテーション。プレゼンのフォーマットも、言葉選びも、着眼点も、みんなそれぞれ。
仕事と家族の間にある葛藤、ひたむきに島で成長を目指す姿、俯瞰して物事を見ながら成される優しい言語化、…。異なる背景や考え方が、島という場所やそこで行われる事業、組織の文脈で束になり、いいことも悪いことも全部を受け止めている姿を見ました。
HiCO-BAYの3人で2泊3日を過ごし、時にはお風呂に浸かりながら、時にはお酒を飲みながら、時には車に揺られながら、プレゼンテーションを受けて感じたことを共有する。そのプロセスは、HiCO-BAYの強みを改めて考える時間にもなりました。
旅に出るといつも実感することがあります。
それは、同じものを見て、同じことを聞いているはずでも、それぞれが見て聞いていることが違うということ。1人は事業や経営に対する考え方を持ち帰ろうとし、1人は地域への向き合い方について持ち帰ろうとし、1人は人の心の葛藤を身近なことに投影しようとする。
そんな違いをどうチームとして束ねながら、自分たちの地域の中で面白い存在として存在し得るか。これから考え、解いていく問がこの旅のお土産になりました。

ここにある日常を磨く
OPEN DAYの3日間は、島の日常というコンセプトで一貫していました。
そして、それは、island companyの事業を一貫しているコンセプトでもあるようです。
非日常を体験してもらう観光とは違う。
日常に人を招き入れて一緒に日常を過ごしてもらうこと。
そのスタイルは、結果的に僕たちにとって、島の魅力を最大限感じ取り、また訪れたいと思う後味につながっていました。
HiCO-BAYが近年事業を通じて考えてきたことの一つに、「プロジェクトを通じてお客さんを増やすのではなく、一緒に地域を見つめて話せる仲間をいかに増やせるか」ということがあります。だから、甑島への人の迎え入れ方としてisland companyが体現していた「島の日常」を中心にした設計からは、学ぶべきことがたくさんありました。
一方で、そこには、日常を「ありのままなんとなく過ごす」ということではなく、「らしさを見つけ、磨いていくもの」として捉える向きがあったようにも感じています。
僕たちは、自分たちの日常を何かの結果として受け止め、その原因や要因を行政などの他者に求めることが少なからずあったように思います。でも、今回の甑島での旅を通して、「自分たちでできる限りを尽くして日常を磨き、発信すること」がこれからの僕たちの宿題になりました。
また、暮らしと仕事の境界が溶けているようなisland companyのあり方は、HiCO-BAYのこれからを考える大きなヒントになりました。

僕たちはどう暮らし、どう働くか
甑島は、高齢化率が50%を超え、人が急速に減りゆく中にあります。それは、僕たちの暮らす兵庫県香美町が直面する状況の少し先をいく姿です(香美町の高齢化率は42%ほどと言われている)。
香美町で法人をつくって事業を進めようとする中、いつもその難易度について考えます。
高齢化が進み、人が急速に減りゆくまちで事業を成立させることは極めて難しく感じられ、ひるみそうになることもあります。だからこそ、せめて自分たちが面白いと思うこと、そして、地域のネガティブがポジティブに変換される装置になり得る企画を考えようとしてきました。
従来の機能を終え、人がいなくなり、地域の衰退の象徴と見なされているような場所。空き地、無人駅、廃校などを新しく地域に生まれた余白と捉え直し、新しい場をつくることを主な活動としてきました。
そのこと自体の価値は変わらずに感じているので、これからも続けていくことになると思います。
でも、今回の甑島の旅で新たに持ち帰ったのは、「今すでにここにあるもの」「地域に変わらず存在し続けているもの」を捉え直すという視点。
甑島への旅を経て、今までのHiCO-BAYが活動の柱にしていたものに新たな視点が加わり、これからの活動が自分たちでも楽しみになるような感覚をいま携えることができています。
HiCO-BAYが立ち上がってから5年間で、メンバーそれぞれの置かれている状況にも変化がありました。メンバーそれぞれにパートナーができ、ライフステージが変わったことで、活動の足場が揺らぎかけているような感覚もありました。旅に出た理由はここにもあります。
旅を終えてみて、ライフステージの変化は、地域との向き合い方を新たにさせてくれる前向きな転機かもしれないと感じています。
メンバーそれぞれが自分自身の人生と向き合いながら、パートナーも含めてHiCO-BAYが、自分たちの暮らす地域と向き合い直してみること。自分たちの暮らす日常を磨き、発信すること。暮らしと仕事の境界を溶かしながら、「自分たちだからこそできること」「自分たちにしかできないこと」を考え、信じて仮説検証を繰り返すこと。
最初の節目、5年を迎えたHiCO-BAYの旅は甑島から新たに始まる気がしました。

レポートの構成上、island companyやOPEN DAYの詳細について紹介し切れなかったので、関連リンクを貼っておきます。
▼ island company
▼ OPEN DAY