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香美町にあるJR鎧駅。そこは美しい日本海を見下ろす高台に位置する無人駅です。鎧駅を取り巻く地域は、人口が減り、高齢化が進み、列車の利用者数は年々減少しています。でも、人口が減ることや高齢化すること、列車の利用者数が減少していることと同じように、そこには美しい景観やあたたかな人、そこを目指して訪れる人の存在があることも事実です。今回の企画は、鎧駅を取り巻く素敵な魅力にスポットライトを当てて、「もっとこの場所を訪れたいと思う人が増えるような」「もっとこの場所って素敵だなと思い直せるような」そんな取り組みにしたいと始めました。

たくさんの出会いが生まれ変わらせた地下道

鎧駅を見ながら僕たちが気になったのは、駅にある地下道の存在。鎧駅のホームは駅に入ってすぐの場所にあり、地下道を通らなくても列車に乗ることができます。鎧駅にある地下道は、鎧駅を訪れた人が列車に乗るためではなく、ホームの向こう側にある海を見渡せる高台に渡るためや、地域の方々の生活動線として使われています。そんな地下道を見て、僕たちは「薄暗い」「ちょっと怖い」「積極的に通りたいとは思いづらいかも」といった印象を持ちました。実際に、地域の小学生からも「地下道は怖いから遠回りして別ルートを使う」と聞きました。

なんとか、この地下道を明るく、絶景への期待感が高まるような道にできないかと考えたとき、6月にふとしたきっかけで町を訪れてくれていたイラストレーターのmimomoさんの存在が思い浮かび、「地域の人と一緒に地下道を塗り替える企画がしたい!」と考えたのが今回の企画です。

11月3日、鎧駅には総勢46名が集まりました(ビックリ…結果的にこの1日は列車の利用者も増やせたかも)。大阪や京都、和歌山、鳥取など地域外からやってきてくれた参加者と、鎧地区の子供から大人までたくさんの人が鎧駅の地下道を塗り替えるために集まってくれたという事実がすでに嬉しかったです。

地下道を塗り替えるのにあたって考えたことの一つは、「地域の人を置き去りにしない」ということでした。地域外から来てくれた参加者が、地域の人と一緒になってまちの魅力を見つけ、見つけた魅力が壁を覆い尽くすような姿を目指します。そのためにまずは、参加者みんなでまち歩きをしました。道中、地域の子どもたちがおすすめの場所を紹介してくれたり、それに親御さんが説明を加えてくれたりしながら、参加者それぞれがいいなと思った場所を写真に収めながら歩きます。鎧駅で初めて出会った人たちが自然と打ち解けながらみんなでまちに視線を向ける、振り返ってみるとそのこと自体がとても価値ある時間だったように思います。

午後からは、まち歩きの中でいいなと思ったスポットをイラストレーターのmimomoさんに伝え、mimomoさんが地下道の壁にライブペイントをしていきました。さっきまで見ていた景色が、イラストとして壁に描き込まれていくのを、みんなでワクワクしながら見つめます。

そして、mimomoさんのイラストの周囲に下絵として書かれていた鎧区の地図に参加者みんなで自由に鎧を表現する絵を描いていきました。手に塗料をつけてペタペタと海を描く子どもを見ながら、次第に大人も一緒になってワイワイ、地下道のでっかいキャンパスに色をつけていく。その過程で会話したり、見つけた鎧の魅力を思い出したり。参加者それぞれの視点が絵や色になって壁を彩っていきました。

最後、絵を描くことが大好きな小学生と大人が熱中しながら仕上げて完成した瞬間、そこには企画段階でイメージしていた以上のものが壁に描かれていました。「地域の子供たち」や「その親御さん」、「地域の外からやってきた参加者」など、たくさんの手で、鎧の魅力という一点を見つめて描いた絵は、不思議なまとまりを持って見えました。

それまでの地下道(↓写真)を思うと、アートがあることで地下道が見違えるように明るくなったことはもちろん、そのアートをつくる過程に関わったたくさんの人の存在も感じられるような気がして、とてもあたたかく感じられました。

完成した地下道で集合写真を撮ったとき、朝のスタート時よりもたくさんの人が地下道にいることに気づきました。この1日の中でも、目に見えて地域の一体感が増したような気が。そして、帰りに小学生が「明日からはここを通るわ!」と言ってくれたのですが、そのことに全てが凝縮されていたようにも思います。

それぞれの目線から「みっけ!チカミチ」

最後に、小学生、その保護者、地域の外からやってきた参加者、イラストレーターのmimomoさん、それぞれの目線からこの1日がどう映ったのか書き残してレポートを締めくくろうと思います。

鎧の小学生やその親御さんのみっけ!

・ここが僕たちのいつもの遊び場!自分たちで作ったサッカー場が自慢の場所!

・絵の具たのしい!おかわりちょうだい!!(絵の具の追加を「おかわり」という男の子、可愛かった)

・⼦どもたちも私⾃⾝も鎧がもっと好きになりました!暗かった地下道が思い出の場所となって嬉しいです、感謝しています!!

地域の外からやってきた参加者のみっけ!

・今まで通り過ぎていた鎧の町を、⼩学⽣に案内してもらえたのが貴重な経験でした!みんなでワイワイ楽しかったです。

・自分の手が加わって駅が豊かに彩られていくのが素敵でした!

イラストレーターmimomoさんのみっけ!

・参加者から溢れる話を断⽚的に拾い、イメージを作りながら最終的に落とし込めたことは⾃分⾃⾝とても⼤きな成功体験になりました。今回の成功体験を活かして、また⾹美町の面白いと思うところをカタチにしたい!

・遊びにいくという軽い感覚で町を訪れて、そこから町を好きになって…という⾃然の流れがあった。例えば、移住相談として町のことを⾒聞きするというのはなんだか私にとっては固くて、ハードルが高く、そのようなスタートだったらこんな⾵に関われてなかったかも。もっと気軽に町の良さ、おもしろさを伝える媒体として絵というコンテンツを活かし、⾒ていて楽しく、わくわくして、気軽に町を知ってもらうきっかけを作りたい!地元ではないけど、好きになった町で、自分の武器を活かして挑戦したいし⾯⽩いことがまたできたらいいなと思います!

最後に

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。企画段階から色々な目的意識を持って取り組みましたが、それ以上に目の前にある様子が素敵で、美しい1日だったなぁと純粋に思えたことが何よりの収穫でした。今後も、たくさんの人と関わりながら、町を面白く前向きに捉えられるような取り組みができればいいなと思います。今回参加してくださった皆さんは、また会いましょう!レポートを読んでくださり、次また何かの機会があれば参加してみたいなと思ってくださった皆さんも、また会いましょう!